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術前説明

入院した日、荷物を整理してベッドに腰掛けて一息ついていたら、Z先生が来てくださった。

「今から話しましょうか。一人で大丈夫かな?」

面談できる部屋に連れて行ってくださり、病気のこと、手術のやり方のこと、術後の予想、手術に伴うリスクなどお話しくださった。

Z先生が、エコーの画面を閉じる寸前に、思わず言ってしまった。
「あの、撮影していいですか?」
「はい? え?」
Z先生はかなりびっくりして、私の顔を見られた。
「あの、せっかくのエコー……」
「この画面を、ですか?」
「はい!」
素早くデジカメを取り出す。
「ちょっと待って。もっとえぇ画面撮っといたら? えぇの探しますから待ってねぇ」
「ありがとうございますっ!」

実は、術前検査結果をS先生がチェックしてくれはったときも、私は胸部レントゲンの画面を撮影させてもらった。
S先生と私の間には暗黙の了解があるけど、それを見ていた看護師さんは、爆笑してはった。

Z先生は、映りの良いエコー画面を探してくださった。
「よし、この画面、撮っといたら?」

かしゃ!

「あー、蛍光灯が入るなぁ。画面の角度、変えるからもう一回どうぞ!」
「ありがとうございますっ!」

かしゃ!

「おぉ、今度はいけましたね」
「ありがとうございますっ!」
私はZ先生がとても好きになった。

「あの、前なんですけど」
「はい」
「『目が点になった』って言うてはったって、S先生から聞きました。ごめんなさい」
「僕が『目が点に』ってことですか?」
「あの、M先生のことで」
「あぁ! 知らんかったもんでねぇ」
「すいませんでした」
「いえ、いいんですけどね」
「M先生は、私が体重44キロしかなくなったとき、気付いて注意してくれはって、今は、それから8キロ増えたんです!」
「……」
それを、説明する必要があるのか、自分?
「すいません」
「いえ、いいんですけどね」
Z先生は心が広い。
「後でエコーをしたいんで、また呼びに行きますね」

手術前、最後となるシャワーを浴びてから、Z先生にエコーの部屋へ呼ばれた。
「傍乳輪切開でいけそうやけどなぁ」
Z先生は、画面が私に見えやすいように、たびたび画面を動かしてくれた。
術前説明のとき、エコーや他の検査結果などの画面を、興味津々で見つめていた私に、Z先生は気を遣ってくださったのかもしれない。

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