「『最後に』って言わないで!」
T先生に
「S先生のところへ、行かないほうがいいかもしれない」
と言って怒られていた頃、他でも同じようなことをしてしまっていた。
耳鼻科のK先生は、ちゃんと治療をしてくれていて、現にメニエール病の症状そのものは止まっている。私が元気になれないのは、他の領域のことが原因で、K先生には何の責任もないのに、時間と労力を費やしてもらって、申し訳ない。
そういう気持ちを、K先生にぶつけては、なだめて頂いていた。
3月の初め、K先生の診察に行ったとき、動悸と息切れがひどく、肩を上下させながら呼吸していて、
「……今も、呼吸が整ってないように感じるんやけど」
と、K先生に心配された。
消えたほうがいい、と思い詰めていた私が、
「じゃあ、最後に……」
と言ったとき、K先生は
「『最後に』って言わないで! はっきり言って怖いからね!」
とおっしゃった。
私はそのとき、
「最後に……をして欲しい」
とお願いしたのだけれど、
「やめときましょう。次にしよう」
とK先生は言った。
K先生は、その後、頑張って冗談を言ったり、頑張って笑ったりした私の努力を、ちゃんと評価してくれた。
「人に迷惑をかけるから、消えたほうがいい」という考えに取りつかれていた私。
「人のために。迷惑をかけないために」って言いながら、結局は自分の考えしか見えていなかったのだ。