部長回診の直前
病院の朝ごはんは7時30分ごろ。
火曜日の朝、同室の患者さんのもとに、担当の先生が来られて、
「今日は部長回診があります。緊張していただかなくていいんですけど、急に大勢で訪ねてきたら驚かれる方もいるんで、お知らせしておきますね」
と話された。
それまで、朝ごはんを食べていた私は、急に喉が詰まった。
私は、12年以上前、内リンパ嚢開放術を受けて入院した。そのうち最後の部長回診のとき、転換性障害でぶっ倒れたことがある。
K先生を慌てさせ、心配をかけたことはもちろんだし、他の先生、同室の患者さんも驚かせ、本当に申し訳ないことをした。
それから10年ほど経ったとき、つまり今回の入院より2年ほど前、
「表情とか、雰囲気とか、ずいぶん変わりましたよね?」
って、K先生は言ってくれはった。
「10年も経てば(笑)」
「いや、時間の問題ではなくて、表情とか雰囲気とか、ものすごい変わってるよね?」
でも、この日、朝ごはんが食べられなくなった自分の根本的な部分は、実はあまり変わっていないのではないかと思った。
食器を配膳車に戻した頃、Z先生が来てくれはった。
「今日は、回診がありますんでね」
「はい」
放送大学のテキストを閉じて正座したとき、部長先生が入って来られた。