退院 <|HOME|> 「撮っときますか?」

もっと話したかった

私は、仕事のこと、勉強のこと、そのほかいろいろなことを、一人で考えたかった。だから、入院する事実はほとんど誰にも伝えなかった。
そして、実際に入院すると、一人で過ごす時間はいっぱいあった。

いっぽうで、Z先生とはほぼ毎日会えたし、M先生やS先生も気を遣って声をかけてくれて、同室の人たちともすっかり仲良くなれたので、思ったよりたくさん話した。

それなのに、病院を出るときには、
「Z先生ともっと話したかった」
「S先生やM先生に、仕事のことやそのほか色々なこと、話しておけばよかった」
って、なぜか強く思った。
別に「もう会えない」というわけじゃないのに。
数か月前には、
「S先生の前からは、消えたほうがいいですよね」
って言っていたこともあるのに、私は勝手な人間だ。

同室の患者さんとは、入退院の時期が重なっていたから、
「家帰ったら、家事が溜まってても、無理せんとこ。適当にしてたって、暮らせるんやから」
と話していた。
でも、人間の心って思い通りにならない。
「今日は、ここだけ掃除する。それ以外はしない!」
って決めていたのに、いったん掃除を始めたら、全部やらないと気がすまなくなって、結局、溜まっていた家事を一気に片付けた。

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