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「目が点になった」

入院の1か月前、初めてZ先生の診察を受けた。

S先生から、
「医局でちゃんと話しとくから。ふゆうがZ先生のところへ行ったときには『聞いてます』って、言ってもらえるようにしとくから」
って言ってもらえていた。
だから、Z先生が、
「S先生から聞いてます」
っておっしゃったとき、S先生と同じ言葉やなって思って、安心できた。

いっぽうのZ先生は、後に
「目が点になった」
って言ってはったと、S先生から聞いた。
直接の理由は、
「M先生っていらっしゃいますよね?」
「はい」
「私、M先生がめちゃくちゃ好きなんです」
という私の告白だったそうだ。

でも、これ以外にも他にも色々と怪しい発言をしている。

「乳汁や血液が出るというのは、どの位前からですか?」
「写真あります」
汚れまくったTシャツの写真を何年も保存し続けている私は、怪しかったかもしれない。

「僕が今日、確認したかったのは『どの乳管から血が出ているのかが、わかるか?』という点だったんですよ。それで、さっきの診察では、残念ながらわからないですね。今は、乳汁は止まっていますよね?」
「あの、実はこの間までステロイドを飲んでいて、それで乳汁が出にくくて」
「ステロイド? それは、どうして?」
「顔面神経麻痺(ハント症候群)だったんで」
「ほぉ!」

「さて、乳管から管を入れて腫瘍をとるという方法が使えないんで、全身麻酔になりますが」
「はい。全身麻酔、12年ぶりです」
「え? なんか受けたことが?」
「あの、耳の後ろの骨を電気ドリルで削って、内リンパ嚢を破ってもらう手術を」
そんな生々しい言い方をしなくても、普通に『内リンパ嚢開放術』でよいと思うが。。。

「では、入院の日程を決めますが、お仕事の都合は?」
「フリーライターなので、時間の融通はききます」
「え? フリーライター!? だから、時間の融通はきき……」
「あの、名刺を……」
別に、ここで名刺を出して、身分を証明しなくてもよかったのだと思うが。。。

そしてM先生の話。
「私、M先生がめちゃくちゃ好きなんです」
「はっはっはっはっはっ(笑)」
Σ( ̄□ ̄)!!
「え、どういうこと(笑)?」
「M先生は、私にはけっこう冷めてはるんですけど、私はあの大きさが好きで好きで」
「……」
きっとZ先生は、
「なぜ、M先生を知っているのか? しかも唐突に愛の告白をするのか?」
ということを聞きたかったのだ。

私のずれた返答が積み重なって、Z先生は「目が点になった」のだと改めて思う。

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