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「受け取ったでぇ」

手術が終わってから翌日の朝までは、看護師さんが1時間に1回、夜は2時間に1回、様子を見に来てくださる。
来る人来る人に、
S先生M先生は愛し合っているのです、ずっと前から」
という話を聞いてもらった。

手術の翌日、朝早くには副看護師長さん(男性)が来てくださって、
「参議院選挙の不在者投票を当院でも行います。その申し込み用紙を持ってきたんですけど、まずベッド起こしますね」
と言って、ベッドを起こしてくれたり、申込用紙を書きやすいように広げてくださったり。
「今日から、歩けますからね。担当の者にカテーテルとか抜いてもらえますよ」
って言ってくれはる。

手術の翌日からは、ベッドから起きて、できるだけ普通の生活に戻ることを勧められる。

まずは、担当の看護師さんと一緒に、尿道カテーテルや点滴をつけたまま歩いてみる。
歩けることが確認できたら、尿道カテーテルを抜いてもらい、動きやすい服装に着替える。
水を飲んでもむせ返らないことが確認でき、昼食の重湯を一定の量以上食べることができれば、点滴をはずしてもらえると聞く。

点滴スタンドを押しながら、お茶を汲みに行ったら、スタッフステーションでM先生が手をあげてくれた。嬉しかったなぁ。でも、スタッフステーションにいてはった他の先生は事情を知らないので、ちょっとびっくりしていた。

T先生からの手紙は、まだM先生に渡せていなかった。入院初日はだれもが忙しそうだったし、次の日は私も手術があった。
それに、Z先生は、
「せっかくやから、直接渡したらえぇやん。M先生はぜったい病棟に来るんやし」
って言ってくれはった。

でも、恥ずかしかったので(今さら?)、担当の看護師さんが点滴を外してくれたときに、
「T先生という人がいて、その人からM先生宛の手紙を預かっているのです」
って、渡してもらえるようお願いした。
しばらくしたら、M先生がスタッフステーションで話してはるのが聞えてきて、
「あぁ、手紙を渡してくれはったんやなぁ」
って分かった。
「○○(苗字)さん?」
完全に私の苗字が分からない様子だったけれど、名前はおぼえていてくれた。

M先生の手に手紙が届いたことで、安心しきっていたけれど、数十分後にいきなり、
「メッセージは受け取ったでぇ」
って声が病室に響いてびっくりした。
いきなりだったので、何が起こったのかわからず、放送大学「心理統計法」のテキストを胸に抱いて、硬直していた。
M先生が来てくれはったってわかったら、とても嬉しくなった。
「いつまで居てるん?」
「1週間の予定って言われてます」
「そっか。どうや、しんどくない?」
「うん! 大丈夫。あのT先生が愛を……」
「手紙はもらった!」
「早く、愛の飲み会を……」
「S先生、動いてくれたら嬉しいけどなぁ……って、何を勉強してんの?」
「あの」
「何?」
「あの、(放送大学テキスト「疾病の成立と回復促進」を見せながら)このページって何が書いてあるんか、理解できへん(泣)」
「ん? ……どわ、なんで肺癌の勉強なんかしてんの!?」
「大学の試験なの」
「確かに、これは読みづらいな」
……M先生に教えてもらったので、肺癌のところはよくおぼえることができ、単位を取得することができた。

手術翌日の夜からは、普通食を出してもらえる。

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