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今日から病気も友達 (MyISBN - デザインエッグ社)

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黙って失踪することは美しいことではない

メニエール病めまい発作を予防するには、
ストレスを軽減したり、小さな楽しみを持ったりすることが、有効です。
私が持っている「小さな楽しみ」をご紹介します。

※※※ただし、医学的根拠に基づくものではなく、私の趣味に基づくものです。
  素っ頓狂な方法も含まれている可能性があります※※※


メニエール病の発病・重症化には、
ストレスが大きくからんでいるという説があります。
私の場合にも、今にして思えば、対人関係で「ぶつかる」ということを避ける気持ちが、
ストレスにつながっていたのだろうと思います。

ぶつからない、自己主張をしない、ということは、
人に譲る・謙譲という気持ちの現われであり、場合によっては「美しい行い」ではあります。
しかし、ある日突然
「こんな私は本当の私じゃない」と我慢が切れてしまうことは、怖ろしいことです。
私の場合は、それがメニエール病の発作を起こすこと、
あるいは転換性障害、胃痙攣といった症状を起こしてしまうことだっただろうと、今は感じられます。

さて、私は最近、2冊の本を読みました。

「絆」小杉健治
「ジャンプ」佐藤正午

「絆」は「真実を知らせると、傷つく人がいるから、黙っている。
傷つけないためには、自分が殺人犯になってもかまわない」と考える被告人と、
真実を暴いて無罪を勝ち取ろうとする弁護人の対立について描いた物語です。
被告人は、「黙っていることが、他人を傷つけないこと」と想っているようですが、
物語の途中から、私にはとてもそうは思えなくなってしまうのです。

というのは、被告人がとらわれている過去とは、何の関係もない現在の家族や親戚が、
どんどん巻き込まれていっているからです。
人とぶつからずに、自分だけが罪を償うことは、究極の自己満足ではないのだろうかと、
考えてしまいます。

いっぽう「ジャンプ」は、黙って失踪した恋人についての話。
5年経ってから再会したとき、恋人は「なぜ失踪したのか」の真実を教えてくれますが、
それは主人公や現在の家族を、とても傷つけるような内容だったのです。
ネタばれになってしまいますが、
「今まで(恋人の失踪後、現在まで)に何年もにわたって、関係を築いてきた人は、
 そんなひどい人だったのか」という真実が、明らかにされてしまうということです。

5年前にその事実を聞いていたら、主人公は現在の家族を持っていないかもしれない。
その意味では、恋人の「黙っておけば、傷つけないで済むかもしれない」といった思いは、
5年たって、より静かに、そしてより深く、深く、
主人公を傷つけてしまったもののように思えて、なりません。

偶然ですが、この二冊を続けて読んだことで、私は自分の来た道を振り返ることができました。

「黙っておけば、傷つけなくて済む」

そう考える傾向が、私にはありました。それは、正しい面もあります。
思ったことを全部、何でも告げていたら、どんな人間関係も、とてもつらいものとなってしまいます。

しかし、「何も告げずに、黙って姿を消す」ということを、私もやってしまったことがあります。

「本当に大事な相手なら、黙って待っていられるか?」
「心配して、半狂乱になって、相手を探すのでは?」

こんな当たり前のことが、この二冊を読んで、胸に迫ってきました。

黙って姿を消すことは・・・失踪とはいわないまでも、
黙って電話番号やメールアドレスを変えて、返事も一切しないで、
共通の知人とも、全部の連絡を断ってしまう、ということは・・・、
ぶつかった結果ではなかった場合には、相手の心にぽっかりと穴を開けてしまい、
相手の心を逆に縛り付けてしまう、罪深い行為なのかもしれません。

メニエール病にかかると、突然の発作が起こるかも知れず、
約束をしていても約束どおり会えない、という事態は、起こることがあります。
これは大変困ることではあります。
しかし、そうした事情も説明されずに、
突然「会えない」と告げられた人の気持ちを、私は考えたことがあっただろうか。

会う約束をしないで、「寂しいけれど、人に迷惑をかけるよりはいいんだ」という思いは、
一見正しいし、美しい行いに見えます。
また、マナーの上で「私は病気よ」と言い立てることは、失礼にもあたりますので、
必要以上に「メニエール病だから会えない」という
強調をすることもないでしょう。

ただ、長い付き合いをしたい人には、いずれ話をしなければいけないときが来ます。
相手を大事に思い、長い付き合いをしなければならないとしたら、
メニエール病のことも話をしなければならないし、
そして、何においても「ぶつかってでも」話し合わなければいけない、大事なことが出てきます。

「ぶつからない」という選択ばかり続けていると、お互いの本音が分からないで、
腹の探りあいが続いていきます。
そしてやがて疲弊してしまい、関係そのものが続かなくなっていくことでしょう。

私の来た道を反省したい。
この二冊の本を読んで、
「黙って失踪することは、美しいことではない」ということを考えたからこそ、
心からの反省をしたいと、私は思っています。

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